心のスケッチ  佐々木大記

信仰生活において起きる心の変化や動きをスケッチしています。心の変化後に起きる現実の変化や奇跡といった結果よりも、「どういう心の変化がきっかけで自己変革をできたのか」という原因にフォーカスした描写を試みつつ、あれこれ自由に綴っています。要は信仰に基づく自己変革の実況中継と日々のあれこれです。

日の出の待合室


※BGM Beauty and the Beast (美女と野獣) guitar / arranged by Kanaho

ある港町の小高い丘の上に、東の海を見下ろすことができる一件のラウンジがあります。

空港はないけれど、ウミネコたちが羽を休めに集まるから、とオーナーはラウンジと呼びます。

そのラウンジは水平線から登ってくる朝日を待つために、日の出前の1時間と日の出後の30分だけオープンします。

日が昇る時間を中心に営業するため、営業時間は太陽とともに一年間移り変わります。

時計で測られる時間に従わない場所が一つくらいあっても良いんじゃないか。

そんな発想で、ちょっと変わったオーナーによって作られた自然まかせの時刻のない時間。

吹き抜けの広い空間では夜明け前の暗闇を小さなランプがきらきらと照らし、大きなガラス窓からは海へと続く芝の丘がのびやかに広がっています。

この静かで美しい夜明けの時間にいろんな人が身をくるみに訪れます。

出社前のサラリーマン

漁から帰った漁師

早起きの老夫婦

夜勤明けの娼婦

ジョギング中のOL

 

幸せな人

傷ついた人

疲れた人

夢を追う人

 

それぞれ違う境涯にある人たちだけど、この静かな時間をそれぞれの小さな幸せにして、大切にしているのです。

 

新聞を読む人

おしゃべりをする人

読書をする人

勉強をする人

日記をつける人

うつらうつらと眠りの世界にいったりきたり

皆それぞれに好きな過ごし方をしています。

 

日の出の時間だけ、誰もが窓の外に顔を向けて、今日を照らす、世界でたった一つの、生まれたての光を浴びます。

それは決まり事でもないのですが、皆それが大切なことであるのを知っているようです。

 

ある人が口を開きました。

「こんな私でも、照らしてもらえるんですね。」

その人の頬には涙がひとしずく、日の光を受けて輝いていました。

オーナは誰に向かうともなく独り言のように言葉をつなぎます。

「今日が一番美しいかもしれないっていつも思います。

一つの光が毎日こうして新しい一日を与えてくれる瞬間、すべての人は美しく照らされています。どんな人であっても。どんなときであっても。」

 

日が昇り切る前にラウンジはしまります。

夜明けとともにそこにいる皆がそれぞれの一日に出発する。

バラバラにめぐり合わせた人たちが、同じ日の光を見て、それぞれの朝が始まる前のひと時を体験します。

言葉を交わすことがなくとも、同じ光がそれぞれをつなぐのです。