心のスケッチ  佐々木大記

真理探求作家の日々のひらめきを綴ってます。愛と幸福をテーマにした児童文学「ジル」を電子書籍出版で連載開始。http://pr4.work/3/jill(10/24)

10.2(火) 交差点

かつて二人ぼっちの部署で2年半程一緒に働いていた女性とバッタリ再会しかけた。

向うはこっちにまったく気付かず、僕からは話しかけなかったので、再会未遂ってとこだろう。

最後に会ったのは恐らく8年前。

自動的に当時を思い出す。

彼女と一緒に働き始めたころは、まだ、自己変革に対する意識も行動も一切ない、挫折の底。

真っ当な生活をすることが夢と言っても良いほど、落ちぶれて汚れている自己像。

人生の底固めをしているような時期だった。

その頃から考えると、赤ん坊が成人になるくらいの成長があった。幼稚な男の相手をさせてしまったのかなと思うと申し訳ない気持ちになる。

8年ぶりの彼女は相変わらず(と言ってはなんだが)元気がなく、幸が薄そうだった。

最後に会ったとき「ねえねえ聞いてぇ。私不幸なのぉ!」と高めのテンションで絡んでいた酔いどれ姿を思い出す。

相変わらずなんだろうな。

決して好ましい状態ではないにしろ、懐かしくて嬉しかった。

今振り返ってみると、当時は本当に気楽で無軌道で気まぐれに生きていた。

楽しそうにも思えるけど、確たる夢も目標もない日々は虚しかった。その虚しさを自覚したくないがために毎日酒を飲んで考えようとする頭を麻痺させていたんじゃないだろうか。

偽物の充実感で自分を説得する。

「なんて幸せ者なんだ」

確かに楽しかったけど、当時握りしめていた類の楽しさを求める気持ちはもうない。

だから声をかけなかったのだろうか。

一駅間同じ車両に乗り、彼女は他の電車に乗り換えていった。

僕はあの頃の自分の影に別れを告げる。

人生のほんのいっとき子供たちは同じ車両に乗り合わせる。

共に見た景色も幻のようだから、僕たちは互いの記憶をいつかつなぎ合わせる。

ふたりは別れ、それぞれの旅に出る。


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