心のスケッチ  佐々木大記

真理探求作家の日々のひらめきを綴ってます。愛と幸福をテーマにした児童文学「ジル」を電子書籍出版で連載開始。http://pr4.work/3/jill(10/24)

海がある土地で産まれ育ち、18まで暮らしていた。上京するまではそれが特別なことだなんて思いもしなかった。
上京していろんなことが田舎と違っている事にショックを受けたが、それらの中でも「海」の喪失は当時の自分にとってとても大きな代償に感じられた。
今では海が身近にない生活が当たり前となってしまったが、いつかまた海の近い場所で暮らしたい。
東京で生きていく以外の人生が許されるなら、やはり他のどこでもない、故郷の美しい海を見降ろせる場所で、遠くの波音を感じながら詩人として生きたい。

あの広さ。
開放感。
水平線の彼方から運ばれてくる風。
果てが見えない雄大な世界の中に小さな自分を感じるとき、とてつもなく大きなものに抱かれ、守られているような気持ちになれる。


いつか旅を終えて安住の地を定めるとしたらそんな環境がいいかなと思うが、今はまだまだ広い世界を飛び回っていろんな人と出会いたい。
だから東京にいるんだろう。常に人工物に取り囲まれて圧迫されるような世界感で息苦しい感じもするけど、刺激に満ちて飽きることがない。
そして、ここを足場にもっと世界中を知りに行きたい。
今は世界中から東京に人が集まってきているので、いろんな人と知り合えるチャンスでもある。去年ホテルで仕事していたときは同僚全員外国人で凄く楽しかった。
またホテルで働きたいとは言わないが、あの出会いが得られるなら「あり」かなとも思ったりする。何か違う形で出会いの場を見つけられたら嬉しいなと思う。
じゃなかったらただ単に狭苦しい都市であくせく働いているだけになってしまう。
作家として生きていくとしても、多様な「違い」との出会いに恵まれていることは大きな財産になるだろうし、なにより純粋に僕は「人」が好きなのだ。

単に景観とか自然環境だとか利便性だとかいう問題ではなく、たとえ大きなストレスにさらされたとしても、かけがえのない出会いを得られるから今ここに自分はいるんだ。
それを忘れて日々に終われ本当に望んでいることが見えなくなりかけていたかもしれない。


結局心の景色を最終的に決めるものは、環境ではない。
都会の狭苦しさにつぶされることなく大きな世界に目を向ける自分自身の意思だろう。
そして、意思だけではなく、実際に沢山の人と会って、自分の心の中になかった世界を知り、新しい色彩をスケッチに取り入れて行きたいと心から思う。
子供の頃から海が好きだったのは、情緒的に落ち着くというのもあるけれど、その先に広がっている知らない世界への憧れも大きくあった。
「こんな狭い田舎から絶対に出ていくんだ。もっと広い世界を知るために。」
そんな風に子供の頃から思っていたけど、37になった今、海の向こうに思いを馳せる暮らしも良いなと思うのは、単に里心がついたとかいうわけではなく、子供の頃のように広い世界を求める気持ちが高まってきているからなのかもしれない。

「こんな狭苦しい心の景色なんかぶち破って、はやく広い世界に出たい」
そんな願望がこのごろ見え隠れしているような気がする。